VOL.15 一会“播州織扇子”

右も左も分からない状態で産地に飛び込んで、時には門前払いを食らうこともあり、壁にぶつかることもいっぱいありました。それでも産地訪問を止めなかったのは、地場産品の魅力もそうですが、産地の人達との楽しい出会いがあったからです。
兵庫県の地場産品だけを扱う店を開店させようと、県下の産地を走り回り、仕入れや商品開発をしていた頃に辿り着いた播州織の産地、西脇市。藁をも掴む思いで立ち寄ったアンテナショップ。
今では産地の皆さんの努力の甲斐もあり“播州織”ブランドはすっかり定着していますが、その頃はまだまだ知名度も低く、商品開発も殆どされていない中で、キラリと輝いて見えた “播州織扇子”
これ絶対に売れる!と、僕のバイヤー魂に火がつき、商品タグを足掛かりに飛び込んだメーカーさん。
「播州織扇子を仕入れさせて下さい!」、突然の訪問にも拘らず親切丁寧に対応してくれた女性スタッフさん。色々と無理を聞いて頂きトントン拍子に取引がスタート、お店をオープンして順調に売り上げを伸ばし、今では夏の主力商品へ。
女性スタッフさんは、僕のブログ“Moucho Trabajo Poquito Dinero ▲”では、“播州織マダム”と呼ばせて頂いて度々登場してもらっています。
出会ってからもう9年近くになるのですね。扇子からスタートし、播州織の雑貨やノベルティー、色々な商品を一緒に作ってまいりました
その“播州織マダム”が、この度一線を退き、若手に道を譲られることになりました。産地に通っていて一番の課題だと感じていた次世代の育成、バトンタッチ。本来なら喜ばしいことであり嬉しいこと。
しかし、現実に目の前に起こると寂しさしか感じない。
小さなハギレを大切に扱い出来上がる“播州織扇子”。播州織の一反は約50m、方や扇子を作るのに必要な用尺は約30cm、播州織の生産量からすると微々たるものかもしれません。しかしこの扇子には“播州織マダム”の沢山の想いが詰まっています。
産地の方々との触れ合いは<COMEPASS_じばさんぽ。▲>でも連載しています。